1月末、正月ボケを感じつつ会社の昼休みにネットサーフィンをしているとハァ〜これまたよくある、写真がかなり良くて情報がほぼないイベントページを発見。こういうのずるいよな〜よくわからんけど良さげみたいなんずるいわ。見るやんそんなん。よくよく調べるとサーカスだった。しかも”仕立て屋”のサーカスらしい。完全な未知。めっちゃ行きたい。というわけでそこそこ高いチケットを前売りで購入。当日は窓展を見た後にルミネゼロに向かった。
会場に入ると物販スペースが広がっていた。初めての空間というのもあり、若干緊張しつつ全体を見て何も買わずに奥へと進む。食べ物やお酒、お洒落衣服や本なども販売していた。気になるのもいくつかあったが、開演時間も迫っており、とりあえず席に着くかと話して垂れ幕をくぐる。
中に入ると中央に机や布が置かれ、それを取り囲むように三列ほど椅子が並べられていた。一番前には白い布が敷かれ、地べたに座っている人もいる。始まる前のバックミュージックで穏やかお洒落な曲が流れており、こういうのに弱い自分はこの時点でテンションがおかしくなる。(内心サイコ〜〜〜ヤベ〜〜〜!!!と暴れ回っていた)一曲終わるたびに耳をそばたて、Shazamで全曲検索しメモった。
しばらくして演者の人が笛を吹きながらでてきた。観客にはちびっこも多くエンカウントするたびに飴玉を配る。若干ハーメルンぽい。途中で紹介が入ったのだが、「仕立て屋の人」「音楽を奏でる人」「照明の人」の三人で公演が行われた。それぞれは演奏中話すことなく、各々ひたすらに音楽を奏で、布を裁断し照明が曲に合わせて美しく変化した。仕立て屋は音楽家に布を巻いたり、背中に刺したり、会場に垂れた糸を結んだりしていく。何をしようとしているのか?最後にどうなるのか?目的はなんなのか?何一つわからないまま、ただただ彼らの行動を私たちが静かに見守っている。
照明もさまざまに変化する。垂れた糸に無数の光のがあたり、夜空のようになった場面が印象的だった。これのために垂らしていたのか?とも思える。知らぬ間に中央の布がサーカスの屋根のようになっていることに気付く。音楽家は楽器だけではなく、水の入った容器をストローでぶくぶくしたり、声にディレイをかけて響かせたりした。
二時間と少しの公演中、中盤に休憩が入った。そこで音楽家の人が物販の紹介をする。「美味しいスイートポテト、苺のワイン、素敵な古本屋、自分が作ったCD、どれもこの後の公演を見ながら楽しんでもらって構いません。本公演は写真撮影、動画、SNSへの投稿、全てを許可しています。そして18歳未満は無料で見ることができます。自分は18歳だと主張する人も、無料で見ることができます。CDは今の状況から逃げ出したい人向け、逃げ出したあとの人向けなどタイプあるので自分に合ったものを選んでみてください。(ちょっとこのへんは私の記憶が曖昧)」と話した。これがな、なんかすっごく素敵なような、尊いものに触れるような、そんなトークだった。(何を言っている?)トイレ休憩がてら物販スペースに行き、スイートポテトと苺のワインを頼んだ。帰りには逃げ出したあとの人向けCDを購入。
そのあと第二部が始まり、観客の多くは彼らの仲間たちがつくった、食べ物や飲み物を頬張りながらみた。第一部はやはりお客と演者という距離感だったが、後半はひとつの村のような感覚だった。「もしワインをこぼしたら、床の布でふいてください。楽器を渡されたら、自由に吹いてくださいね」という言葉に笑いがおこり、そしてゆるやかに演奏が始まる。最後、仕立て屋によってサーカスの屋根が出来上がっていた。今回の「仕立て屋のサーカス」は不思議な空間、だけではなく先進的な部分も感じられらた。未成年に対する芸術への考え方や、観客への自由度の高さ、企画がゆるいようにみえて真逆、洗練されていた。みながひとつのものを見つめている感覚。機会があれば、ぜひ彼らの演奏と仕立ての様子、美しい空間を観に行ってほしい。